Column of the Day
今日のコラム

コラムTOP > 今日の記事

Vol.35 WISDOM in Depth
「作文のポイント」but 執筆の舞台裏

~ ビッグローブより ~
『ウィズダム英和辞典』の編者・編集委員の先生方が書かれたコラムをお届けします。

「作文のポイント」but 執筆の舞台裏

今回の第2版から新設された「作文のポイント」は、そのコラム名が示すとおり、題材の多くが、大学受験生が実際に書いた英作文の添削指導経験から生まれており、類書でこれまで取り上げられなかったものを数多く扱ったことで、「ウィズダム」を発信型の辞書としてもさらに前進させることができた。
今回は、その中から接続詞 but の項にある記述について執筆の経緯を書かせていただこうと思う。

まず1つ目の「butの直後にコンマを打つ誤り」は和文英訳で学生が頻繁に犯すもので、特に元の日本語に「しかしながら、…」とか「だが、…」のように読点が打ってあると、学生はそれにつられて英文のbutの後にもコンマを打ってしまうことが多いように思う。
本コラムでは、こうした文字だけの説明ではわかりづらい事項を、正誤の文を並べて示すことで、視覚的に学習者にわかりやすくした。

2つ目の「日本語の『が』が逆接を表していないので but が使えない例」は本来なら和英辞典に記述する類の注記だが、「作文のポイント」というコラムの性質からとりあげた。
実は私がこの誤用をあえて書いたのには理由があって、私自身、学生時代にこの but の使い方を誤った苦い記憶があるからだ。
「自分の友人を誰でもいいから一人選んで紹介する英文を書け」という課題に対し、私が(「山椒は小粒でもぴりりと辛い」という日本的な発想で)「彼は小柄だったが、頭はとてもよかった」のような内容を He was short, but he was very clever. のように書いたところ、アメリカ人教師から「身長と頭のよさは何の関係もないのだから but を使うのは論理的におかしい」と赤字を入れられた。
「しかし=but」でないことは頭では十分理解していたつもりだったのに、いざ自分で英文を書くとなるとこの始末である。
そういうわけでこの項目は、私がかつて犯した誤りへの反省の気持ちも込めて執筆した「いわく付きの(?)」コラムなのである。



著者プロフィール


田上 芳彦(たがみ・よしひこ)
駿台予備学校講師。
著書に『英文法用語がわかる本』(研究社)など。『ウィズダム英和辞典』編集委員。



Copyright(C) BIGLOBE Inc.