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Vol.39 WISDOM in Depth
「コーパスの窓」を開けると…

~ ビッグローブより ~
『ウィズダム英和辞典』の編者・編集委員の先生方が書かれたコラムをお届けします。

「コーパスの窓」を開けると…

英和辞典には様々なコラムが存在する。
それぞれ特色を持っているが、『ウィズダム英和辞典』第2版に登場した「コーパスの窓」はコーパスを利用することで得られた発見を中心にしたコラムである。
今回はコーパスの活用が「コーパスの窓」にどう生かされているのか、前置詞のfromの用法に注目してみてゆくことにする。

前置詞 from の典型的用法の一つは、場所を示す名詞と共起するものである。

My sister just called from Tokyo this morning.
Something has been stolen from my room.

こうした出発点・起点を示すfromは場所を示す名詞と共に使われることが多く、日本人英語学習者にとっても「~から」という日本語と結び付けて理解しやすい。

ところが、この from が名詞ではなく副詞や前置詞と共起する場合がある。
三省堂コーパスからは以下のような例が見つかった。

Remove the screws protruding up into the faucet from below.
Light was pouring into the shaft from above.
She jumped out from behind the sofa and screamed.

こうしたfromの使い方は日本人にとっては難しいものである。
意味を理解する場合にはさほど問題がなくても、会話や作文といった英語による「発信」活動の際にはなかなか出てこない。
「~から」という意味だから、場所を示す副詞や前置詞なら何でも使えそうだが、コーパスを見ればそうではないことがわかる。
場所を示す副詞・前置詞のうち、典型的に用いられるのはbehind, below, above などで at, on, in はほとんど用いられない。
こうした情報を盛り込んだものが以下の「コーパスの窓」である。

この説明と例文を読めば、どのような副詞・前置詞と一緒に使えばいいのか、またどういった句と用いるのが自然かといったことがわかり、非母語話者である日本人がこの用法の from を会話や作文に使う際の手助けとなる。
ちなみにコーパスを見ると、この from は come, go, walk, run, move, jump などの動作を示す動詞とよく共起すること、特にbehindが後続する場合は come out, pop up, jump out, step out などの句動詞と共に典型的に用いられることが伺える。

英和辞典には意味を理解する「受信」活動だけではなく、意味を伝える「発信」活動にも役立つ情報がたくさん盛り込まれているが、コーパスを利用すれば「どう発信すればよいのか」の手がかりがつかめる。
そうした情報を利用すれば、非母語話者の日本人でも、より自然な、英語らしい英語を発信することが可能となる。
「コーパスの窓」にはこうした母語話者の英語使用を反映した多くの「発信」活動のための情報が盛り込まれている。
ぜひ「コーパスの窓」を開けてご覧頂きたい。



著者プロフィール


吉村由佳 (よしむら・ゆか)
京都外国語大学大学院卒。専門はコーパス言語学・辞書学。
『ウィズダム英和辞典』編集委員。



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