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Vol.48 WISDOM in Depth
コーパスが英和辞典を変える(3)

~ ビッグローブより ~
『ウィズダム英和辞典』の編者・編集委員の先生方が書かれたコラムをお届けします。

コーパスが英和辞典を変える(3)

■基本語を「知っている」とは?

現行の学習指導要領では中学校における英語の必修単語は900語という総数が定められている。
教科書によって900語の内容は異なるが、いずれの教科書も共通して扱っている語がある。
名詞に限っても、wind, way, ideaなど英語における基本語といわれるものである。
これらの単語を「知っている」とはどのようなことを意味するのだろう。
それぞれの単語の意味が「風」、「方法、道」、「考え」だと言えれば、これらの単語を「知っている」と言えるのだろうか。
では「風が吹く」、「風が強まる」、「風がやむ」は英語でどのように表現するのか。
多くの中高生は「風が吹く」を除いて答えることができない。
単語を「知っている」とは、その語の意味が認識できるだけでなく、その語にまつわる状況を表現できて初めてその語を「知っている」と言えるのである。
windと言えば、blow (吹く), pick up (強まる), die down/stop (やむ) が即座に思い浮かばなければならない。
『ウィズダム英和辞典』ではこのような語と語の典型的な結びつき、すなわちコロケーション情報を「表現」の囲みで提供している。

さらに基本語を「知っている」と言えるためには、上で述べた語彙的パターンであるコロケーションだけでなく、基本語が持つ文法的パターンを知ることも重要である。
その抽出と分析にコーパスが威力を発揮する。
たとえば、wayという語はコーパスで分析すれば、‘限定詞+(形容詞)+ of doing’, ‘限定詞 +(形容詞)+ to do’, ‘in + a/an +(形容詞)+ way’, ‘the way + that節’, ‘動詞 + one’s way + 前置詞句’などの多様なパターンを有することがわかる。
その1つが‘the way + 節’で、以下のコンコーダンスデータが示すように、このパターンには4つの意味用法があることがわかる。

『ウィズダム英和辞典』ではこの分析結果をwayの語義2に反映させている。

頻度の観点から2番目にもってきたことと、a~dの4つに分けて詳述できたのは、コーパス分析のたまものである。
現代英語の使用実態を反映しているという点で、この用法にこれほどのスペースと重要性を与えた辞書は他にないと自負している。



著者プロフィール


赤野 一郎 (あかの・いちろう)
京都外国語大学教授。
専門は語用論,コーパス言語学,辞書学。
編著書には『英語コーパス言語学』(研究社出版)など多数。



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